遺伝子重複
ロドプシン(点線)と三原色のオプシンの平均吸収スペクトル
引用元:ロドプシン - Wikipedia
大野乾の最後の執筆書である未完 先祖物語―遺伝子と人類誕生の謎と、その前著である続 大いなる仮説―5.4億年前の進化のビッグバンを読み返してみた。遺伝子重複に関して述べているからである。また、先祖物語には、有袋類であるオポッサム写真が載ってあった。。脊椎動物は、魚類から鳥類まですべて三原色に基づいた色感を持っているそうである。色感を認識する複数のオプシン(Opsin)遺伝子(ブルーオプシン、レッドオプシン、グリーンオプシン)は、ロドプシン(Rhodopsin)から進化してきた。ところが、哺乳類に進化に伴い、夜行性食虫類の原始哺乳動物は、レッドオプシンとグリーンオプシンは使われなくなり、変性してしまった。したがって、霊長類を除くほとんどのの哺乳類には色感がない。色感は、霊長類の進化の過程で、変性してしまったレッドオプシンが遺伝子重複により、2種類になり、さらに変異によってオプシンとして機能するようになり、片方はレッドオプシンとして、もう片方はグリーンオプシンとなり、最終的に色感を取り戻したという話である。
したがって、有袋類にオポッサムや単孔類にカモノハシのオプシンがどうなっているのか、非常に興味がある。他の哺乳動物のように、変性して色感を失ってしまっているのか、それとも、鳥類・爬虫類のように、機能しているレッドオプシンとオリジナルのグリーンオプシンを持っているのであろうか。
大野乾は、1970年に遺伝子重複説を唱え、1990年代になってDNAの配列がかなり明らかにされ、彼の仮説が正しいことが再認識された。脊椎動物の染色体は、二度の染色体の二倍体化によって、四倍体化されているということである(Numerous groups of chromosomal regional paralogies strongly indicate two genome doublings at the root of the vertebrates | SpringerLink)。Hox遺伝子群など、実際に、かなりの数の基本的な遺伝子が4つのファミリーからなるという証拠もある。残念ながら、大野乾は、2000年に他界されたため、最近のゲノムプロジェクトの結果を利用して自分自身で仮説を検討するということが不可能になった。
先日紹介(2008-05-19 - Myogenesistの生物学の部屋--進化・発生・幹細胞・再生医療に関するトピック、2008-05-14 - Myogenesistの生物学の部屋--進化・発生・幹細胞・再生医療に関するトピック)したのNatureの論文にはカモノハシとオポッサムのゲノム解析の結果が掲載されているが、オプシンに関しての記述は見当たらなかった。そのうち時間があるときに、Gene Bankのデータを元に解析してみたいと持っている。
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